今や相見積りを取ることは常識のようになっていますが、
いざ数社から見積りを取ってみると、総額はもちろんのこと
塗料も違えば塗装面積まで違っていたり…で、
どこを信用したらよいのか迷うばかり…
なんてことはありませんか。
見積り書を比較する決め手
業者の選択にあたっては、数社から見積りを取って見比べることは
とても良い方法だと思います。
ただ、いくらたくさん見積りをとっても、
明確な判断基準を持っていないとかえって迷うばかり…
という結果になりかねません.
見積り書でいちばん大切なのは何だと思いますか?
正確な面積や長さの数字でしょうか…?
屋根や外壁の面積、それに破風板、軒天、雨樋…等々の
面積や長さは不正確なものより正確であるに越したことはありません。
けれど、お客様が知りたいのは、正確な面積や長さの
寸法ではないはずです。
長年住宅の塗り替えをしている職人なら、
その家を見たらおおよそ塗料がどのくらい必要で、
どのくらの費用がかかかるかの見当がつきます。
ただそれを確認するために、面積や長さを測る必要があるのです。
ですから、正確な寸法よりももっと大切なこと
それは「どこに」「なにを」「どのように塗って」「幾らなのか」
を知ることです!
どこに
「どこに」というのは、具体的な塗装箇所のことです。
外壁を始めとして、屋根、破風板、軒天、雨樋、雨戸、霧除け、物置…等々
塗らなければならない全ての箇所が
具体的に記載されているか…の確認が必要です。
そしてそのときに長さや面積の確認をしても、
あまり意味はありません。
なぜなら、屋根も外壁も全て塗ることが大前提だからです。
例えば、雨樋の長さが何メートルであろうと、
雨樋すべてを塗って幾らということが分かれば、
何メートルでも関係ないと思いませんか。
これは屋根も外壁も同じことです。
塗装箇所の確認は、口頭ではなく見積り書に
きちんと記載されていることが肝心です。
なお、外壁に付帯している(雨樋や霧除け…等々)などは、
銅板やステンレス製、アルミ製、樹脂製のものを除けば、
全て塗装対象です。
もし、どうしても塗装対象外のもの(樹脂製やアルミなど)も
塗りたいという場合は、必ず事前にお知らせください。
その素材に見合った下塗り材、上塗り塗料を
手配しなければならないからです。
また、建物本体だけでなく、他の部分も塗ってほしいけど、
高くなるかな…?
と思われることもあるかもしれません。
そんなときも、ためらわずその部分も含めた
見積りしてもらうことをおすすめします。
なぜなら、その部分を加えることで予算を超えるなら、
その部分を削ってもらえば済むことですし、
その部分をサービスしてくれる業者があるかもしれないからです。
最悪なのは、塗装がすべて終わってから、
やっぱりあそこも塗ってもらえますか…です。
塗装をするには、最低でも「ケレン」「養生」「下塗り」「上塗り」
の工程が必要で、その工程に必要な塗料や用具は、
工程順に現場から資材置き場に戻してしまっていますので
それをまた持ってきて、最初からやり直すというのは、
職人の大きな負担になってしまうからです。
何を
「何を」というのは、先程の塗装箇所をどんな塗料で塗るか
ということですが、ただ単にシリコン塗料とか、
ウレタン塗料という表記では不十分です。
なぜなら、どの塗料メーカーも同じシリコンやウレタンでも、
グレード差を設けていますし、
1液塗料か2液塗料かでも価格が変わるからです。
ですから、必ず塗料メーカー名と製品名が明記されていることの確認が必須です。
メーカー名と製品名がわかれば、お客様自身がネット検索して
その製品のグレードを知ることができ、製品を比較することができるからです。
どのように塗ったら
「どのように塗ったら」は、下地調整を含む全塗装工程のことです。
塗装にとって、なによりも大切なのは1も2もなく下地調整です。
どんなに優れた塗料でも、下地に食いついてなければ
砂上の楼閣だからです。
まずは、高圧洗浄。
言うまでもなく屋根から外壁までを水圧で表面を
きれいにすることからから始まります。
その後の「下地調整」は、木部や鉄部があるならなら
ケレン(サンドペーパー等による表面の平滑化や目粗し)や
サビ落としなどが必要ですし、モルタルの家なら、
モルタル部分のクラックの補修、サイディングやALCの家なら
目地のコーキング剤の打ち返しや増し打ちなどが最低限度必要になります。
このほか、コロニアルやカラーベストのようなスレート瓦の屋根材の場合は、
屋根材のひび割れの補修、板金の釘じめなどが必須です。
下地調整が終われば、窓や玄関ドア等のビニール養生や
土間の養生をすることになります。
養生が終了すれば、いよいよ塗装工程に入ります。
屋根や外壁は3回塗りが一般的ですが、3回塗りというのは
同じ塗料を3回塗るということではありません。
1回目は、下地と上塗り材とのマッチングを考慮した
下塗り材を塗布します。
2回め、3回目は同じ上塗り塗料を重ね塗りしますが、
このとき同じ色を塗り重ねると、塗り残したり、
故意に3回目を塗らなくても気づかれない…
というおそれがあるので
必ず2度目の色(中塗り)の色を変えるのがベストです。
屋根や外壁の塗装が終わると、外壁に付帯している破風板や雨樋などの
塗装をすることになりますが、以外に軽視されるのがこの付帯物の塗料です。
外壁や屋根には、せっかく20年以上持つような
高価な塗料を使ったとしても、
付帯物を塗る塗料がそれ以下の塗料では、屋根や外壁と同じように
20年以上持たせることはできません。
外壁や屋根がしっかりしているのに、付帯物だけが
その半分も持たなかったとしたら、その部分だけを塗り替えるのに、
また足場をかけなければならない…なんてことになりかねません。
こうした塗装工程をしっかり確認することで、塗装業者がどんな塗装を
しようとしているのかを判断することができます。
項目ごとの値段の比較に意味がある…?
見積り書を比較するのに、いちいち項目ごとの値段を比較することは
少なくないかもしれませんね…
例えば、足場代を比較してA社は極端に安くてよいのだけれど
塗装費が高すぎる。B社は屋根の塗装費が高いのに、外壁の塗装費は
他社よりも安い…等々といったことです。
このように項目ごとの値段を比較して、一番安い項目だけを拾って、
それを合計してその値段でお願いしますといって、
引き受けてくれる業者があるでしょうか…?
見積り書の項目のたて方は業者によってそれぞれです。
養生費を計上せずに塗装代に含める業者もあれば、
もっともっと細分化してたくさんの項目を立てる業者もあります。
たとえば、足場代が他の業者と比べて半額以下だとしても、
合計金額を比べたら他の業者よりも高いのでは
なんの意味もないはずです。
総額で幾らか…を比べる
見積り書を比較するには
「どこに」「なにを」「どのように塗って」「総額幾らなのか」
を知ることであって、各項目を見比べてもあまり意味がないように思います…。
見積り書は、項目を増やして細分化すればするほど高くなるからです。
逆に言うと、高く取るには項目をたくさん増やして細分化する必要があり、
項目がたくさんあると、なんとなく正確で良い会社のように
錯覚させる効果もあります…
ということも知っていただければと思います。
ちなみに わたしは
もちろん、実際には見積り書だけで業者が決められるのではなく、
金額以外のファクターも加味した上で決定されるのでしょうが…
こうした見積り書の中身も検討せずに、ただ単に安い業者は信頼できないとか、
3社を見比べて真ん中の値段だから、この業者が適正価格…というのでは、
優れた業者を見逃してしまうような気がします…
標準的な見積り書の項目
見積り書の項目ごとに比較してもあまり意味がないと書きましたが
一応、平均的な見積り書の項目を書いておきます。
わたしは、これくらいの項目数が妥当なような気がしています。
参考にしていただけたらと思います。
1.足場代(現在ではほとんどが楔形足場。その架けバラし費用)
2.飛散防止用のネット(シート)や、開口部のビニール養生、
土間の敷物等の養生費
3.高圧洗浄を含めた下地調整費
(モルタルの家ならクラックの補修、木・鉄部があるなら
ケレン、サビ落としなど、サイディングやALCの家なら
目地のコーキング剤の打ち返しや増し打ち等が必要)
4.外壁塗装費
下塗り材・上塗り材の塗料メーカーと塗料名の記載が必要。
下塗り、中塗り、上塗りの工程数が表記されていること。
5.外壁の付帯物塗装費 (破風板、軒天、雨樋…)などの塗装費
外壁と同じように、塗料名や塗装工程の表記が必要
6.屋根塗装費(コロニアルなどのスレート瓦の場合)
塗装前に板金の釘締めや屋根材の補修の記載が必要。
外壁と同様に、具体的な塗料名、塗装工程の記載が必須。
一応このくらいが一般的な項目ではないかと思います。
これ以外に必要なのは、ベランダの防水が必要なら、
その項目が増えたり、そのほかに、諸経費とか廃材処理費
といった項目を加える業者があるかもしれません。
以上のような事柄を参考にしていただいて、見積り書の中身をしっかりと
検討していただくことが、損をしない塗り替え工事につながるのでは…と
考えています。