急にイチトリ、ニトリ、サントリ…なんて言われても
我々のような業界のものでないと、なんのことかわかりませんよね…
イチトリとは一次下請けのことで、以下ニトリは二次下請け、サントリは三次下請け
のことですが、古い職人の間では、イチトリ、ニトリは食えるがサントリは食えね~な
などと表現します。
これは、塗装業全体が基本的には下請け業界だということを示している言葉です。
塗装職人のほとんどが一人親方。
外壁・屋根の塗り替えを…と考えたとき、
どこに依頼したら良いのか迷われるのではないかと思います。
で、チラシや、ネット、営業マン等々から情報を仕入れて
どの業者にしようかを決められるのだと思うのですが、
そのときに
「当店は優れた下請け業者、下請け職人に施工させています!」
などという業者・会社に出会うことはまずないでしょう…!
なぜそのような表記をしないのでしょう?
当然ながら、そう書けばお客様に敬遠されるからです!
でも、現実はどうでしょう…?
外壁・屋根の塗り替えをする業者・会社は、掃いて捨てるほど存在します。
その業者のすべてが自社の職人が施工しているのでしょうか…?
大手ハウスメーカー、工務店、リフォーム店、大手家電量販店、
大手ホームセンター、生協、塗装専門店、塗装の営業会社…etc
このどこに頼んでも喜んで塗り替え工事をしてくれます。
なぜ、一見塗装とはなんの関係もなさそうな会社まで
塗り替え業に手を出せるのでしょう…?
それはとても簡単な理由です。
仕事さえ取れば、施工してくれる業者・職人が
ゴロゴロしているからです。
そのため、個人で仕事を請け負って、暇な職人に仕事を投げる
いわゆるブローカーも沢山いるのが、この業界なのです。
こうしたことが起きるのは塗装職人のほとんどが、
一人ひとり独立した事業主の、いわゆる一人親方なので
自由にあちこちの仕事が請けられるからなのです。
塗装職人の車に店名がないのはその証拠。
それなりの規模を持った会社・業者の営業車には
必ずと言ってよいほど社名・店名が入っているのを
目にしたことがあると思います。
けれど、実際に現場で仕事をしている塗装職人の車を見てみると
ほとんどの場合、社名・店名を見つける事ができません。
足場には立派な社名・店名の入ったシートを掲げているにも関わらずです。
これは、改めて言うまでもなく、そこに携わっている職人が
その会社・業者だけから仕事を得ているわけではないので
自分の屋号を名乗るわけにはいかないからなのです。
自社施工だから安心…!?
当店は、塗装職人を何人も抱えているので、他社に仕事を投げることはありません!
と主張する業者さんも沢山いらっしゃると思います。
そうした業者さんが沢山存在していることも十分承知しています。
けれど、そこにいる職人のほとんどが、先に述べた一人親方なのではないでしょうか…
職人を抱えている、というのはそうした個人事業主の一人親方を
今のところその会社にとどめているだけではないのでしょうか…
そこにとどまっている職人は、その会社から請負で仕事をする人もいれば
一日幾らという手間賃で働いている人もいます。
ですから、結局前述した下請け業者・職人と基本的になんら代わりがないのです…
「当社の職人」というからには、その会社と正式な契約を交わした社員、職人でなければ
ならないように思うのですが、そのような正式契約をしている正社員・職人が
どれほど存在するのでしょう…
仕事が職人を呼ぶ
あたりまえですが、仕事量の多いところに職人は集まります。
逆に仕事量が少なくなれば、仕事量の多いところ、単価の良いところ
もっと条件の良いところへとそれぞれ散ってゆきます。
このことが、何業でも塗り替えに手を出せる所以です。
このようにして塗装職人の多くは、大手ハウスメーカーの仕事もやれば
塗装専門店の仕事もやり、リフォーム店の仕事もやるし、塗装とは関係なさそうな会社の
仕事もやるということになるのです。
それは何を意味しているかといえば
どこに頼んでも仕事の中身は大差ないのに、
頼む業者によって料金だけが大きく変わってしまう!
ということなってしまう、ということなのです。
塗装の施工会社に上場企業は存在しません。
塗料メーカーには、上場会社が複数存在しますが
その塗料を使って施工する会社には上場会社は存在しません。
最初に塗装業は基本的に下請け業だと書きました。
それは公共施設の塗装などで、直接見積もりに参加して直接仕事を請けている
塗装会社はほんの一握りしかいません。
大きなマンション、病院、学校…等々の塗装工事のほとんどが
大手工務店が元請けしたものを、見た目は大きな塗装店でも、そこから下請けして
それをまたその下に…という構図で仕事をしているのが現実なのです。
ですから塗装業というのは、大きな会社から末端の
塗装職人まで、全てが下請け仕事をしている…といっても
過言ではありません。
結局は職人ガチャ…!?
例えば大きな塗装会社が、自社で職人を養成し、養成した職人と
正式な社員契約を交わして、その会社が全責任を負って施工する!
これが、お客様が安心して頼める理想的な会社なのではないか…
とわたし自身は考えています。
けれど、現実にはそのような理想的な業者が存在するということを聞いたことがありません。
言葉は悪いですが、職人ガチャに期待するしかないのかもしれません。
職人ガチャというのは、良い職人に出会うかどうかは「運まかせ」という意味で
会社のネームバリューなどに頼るのではなく、良い職人に出会うことの方がずっと大切…!
といっているのです。
けれど、良い職人かどうか…も、どこにいるか…もわからないのが現実。
こうしたことから、業者・職人を選ぶ際には、過去に施工した現場を見せてもらったり、
その家の人に感想を聞いてみたり…
といった、ひと手間・ふた手間を加えてから業者選びをなさることを強くお勧め致します。