タスペーサーをご存知ですか?
タスペーサーというのは、下のような形をした、塗膜の「縁切り」をするための器具
の商品名です。
と言われても、なんのことかわからない方もいらっしゃいますよね…
このタスペーサーを必要とするのは、下の写真のようなコロニアルとかカラーベストと呼ばれる
平板のスレート瓦に用いられるものです。
で、それをどう使うのかというと、このような屋根を塗装すると
瓦と瓦が重なっている部分が塗料でふさがってしまい、瓦の下が蒸れて
雨漏りの原因になりかねないということから、
このタスペーサーを瓦と瓦の間に差し込んで
隙間を作って、塗料の縁を切ろうというものです。
タスペーサーの効用
タスペーサーの効用については、様々な場面で語られていて、今更わたしが語るまでもないこと
ですが、このタスペーサーの優れているところは、縁切りを塗装後ではなく
塗装する前に取り付けることで、簡単に縁切りができるところです。
この縁切りすることは塗料メーカーも推奨しています。
では、なぜお客様に勧めしないの…!?
その理由は、簡単明瞭!
実証データを見たことがないからです。
どういうことかというと、縁切りが大切、縁切りしないとだめと言いながら
その結果が示されていないということです。
例えば、縁切りをして塗装した屋根と、縁切りをしないで塗装をした屋根を
10年、20年、30年といったスパンで実証実験をして比較した
というデータを目にしたことがないのです。
タスペーサーを挿入した屋根と挿入しなかった屋根を10年後、
20年後、30年後に比較したらどのような結果になったのか…?
この事がわからないと、タスペーサーを挿入する意味が
解らなくなってしまいませんか…
こうした実証データは存在するのでしょうか…?
そうでなければ、縁切りをする意味がありません。
浸透圧で水が瓦の下に入り込むのを防げる、蒸れるのを防げるから
野地板の腐食を防げる…!
と言っても、その結果として屋根の寿命がのびなければ、
なんのための縁切りかわかりません。
そのためにも、実証データは必須のはずです。
良いと思う…では、お客様にお勧めすることはできません。
タスペーサーは言うまでもなく無料の製品ではありません。
縁切りしたほうがいいから…といって施工業者負担の無料のサービスなら、
マイナスの結果でさえなければ、詳細の説明は無用でしょう。
けれど、タスペーサーを挿入するには、それなりの費用をお客様に
負担していただかなければなりません。
塗装費以外の費用をお客様に負担していただくのに、ただ「いいと思う…」とか、
「ほかでもやってるよ…」といった根拠のないことでお願いすることなどありえません。
だからといって、わたしは縁切りがなんの意味もないとか、
無駄だと言いたいのではありません。
コロニアルなどの屋根材の寿命はおおよそ20年~30年と言われています。
タスペーサーを挿入すると、どれほどその寿命が伸びるのかを知りたいのです。
本当は、メーカーではとうの昔に実証実験済みで、そのデータをネットに上げてないだけ
なのかもしれません。
もしそうだとしたら、是非、だれもが検索できるようにして頂きたいと思います。
実証データさえあれば、浸透圧がどうのとか、結露云々などの説明は
ほんのひとことで済んでしまう話です。
実証データが必要なもう一つの理由
わたしは、実証データが必要だと思っているのにはもう一つの理由があります。
それはスレート瓦の構造そのものが内部結露を起こし、野地板だけでなく瓦そのものも
劣化させているのではないか…と考えているからです。
その最大の原因は、スレート瓦を防水紙(ルーヒング)を介してはいますが
直接野地板に打ち込んでいることで、太陽の熱が野地板に伝わりやすく、
野地板の結露・腐食につながっているのではないでしょうか…
しかも、昔の家のように天井の熱を逃がすための八切などが設置されていない家が多く、
なおさらのことのように思います。
そのような構造の屋根材にタスペーサーを挿入することだけで、防げるのだろうか…?
という疑問を持っているからです。
この疑問を払拭する上でも、実証データが欲しいのです。
最後に
ちなみに、わたしは30年以上住宅塗装にたずさわってきていて、その間
かなりの数のコロニアル屋根の塗装をしてきましたが、1軒もタスペーサーを
挿入したことがありません。
また、その間に一度も雨漏りなどのクレームを受けたこともありません。
もちろん、そのことでタスペーサーが不要だなどと決めつける気はありません。
しかし、タスペーサーを挿入している仲間などにその理由を聞いてみると、
親会社に言われてるから…とか、たまにその理由として異口同音に口にするのが
浸透圧、結露するから…云々と、どこかで聞いたことを、又聞きして、その又聞きを
知ったかぶりをして言っているような説明ばかりです。
それは何もわれわれの仲間に限ったことではなく、
youtubeなどでタスペーサーの効用についての動画を見る限り、
どこも同様の説明で,具体的にどのくらい寿命が伸びるといった
説明をする業者を見つけることができませんでした。
しかもそうした業者の中には、タスペーサーを挿入しない業者・職人は
手抜きしているかのような表現さえもあったりして、とても残念に思っています。
お願い
わたしは再三述べているように、タスペーサーの実証データを
見つけることができないでいるだけで、実証データが存在しないと
主張しているわけではありません。
そのため、どなたか実証データの存在をご存じの方は、
是非わたしにお知らせくださるよう、お願いいたします。
実証データが確認され次第、この記事を即座に消去した上で
新たな謝罪記事を公開したいと考えているからです。
ぜひとも実証データをご存じの方は、重ねてお知らせくださるよう
お願い申し上げます。
関連記事「塗らない屋根と塗れない屋根」もご参照ください。