塗料の種類や材質を知っておこう
塗料の種類や材質の話をする前に
塗装には「躯体の保護と美観」という基本的な役割を負っています。
それは建築塗装に限らず、車や船舶も同じです。
その基本的な役割りとともに「遮熱」「低汚染」「撥水性」
「親水性」「防カビ」「浸透性」「弾性」…等々の「機能性」も加わって、
建築物の保護と美観のために塗装が施されています。
塗料って何で出来てるの?
塗料は「顔料」「樹脂」「添加物」「溶媒」
の4つの成分で成り立っています。
塗料そのものの寿命は、この中の「樹脂」によって決まるといえます。
その樹脂には、フタル酸樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、
ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂…等々
たくさんの合成樹脂があります。
このうち、戸建て住宅の塗料に限って言えば、アクリル、ウレタン、
シリコン、フッ素樹脂等が対象と言っていいと思います。
この他に、特殊な機能を付加した様々な高機能塗料があります。
例えば、紫外線の力で汚れを洗い流す「光触媒塗料」や
塗料の劣化因子(ラジカル)を抑制した「ラジカル塗料」や
樹脂に無機質な鉱物などを加えた「無機塗料」なども存在します。
各塗料の耐候性(耐久力)の目安
各塗料の耐候性(耐久性)はおおよそ下記のとおりです。
アクリル塗料……………………8年前後
ウレタン塗料……………………10年前後
シリコン塗料……………………12年前後
ラジカル(シリコン)塗料……15年前後
フッ素塗料………………………20年前後
無機塗料…………………………20年以上
各塗料の耐候性の目安はおおよそ上記のとおりですが、
この数字はあくまでも大まかな目安であって、建物の立地条件や素地の状態、
塗装技術や塗装方法等によっても耐候性は増減します。
塗料の種類が違うと「仕上がり」や「値段」はどうなの?
塗料の価格は、基本的には前述したアクリルから無機塗料まで
順におおよそ比例して高くなります。
もちろんその中には、機能性の付加価値によっては価格が
増減することもあります。
仕上がりだけで比較するなら、どの塗料で塗っても
大差なくきれいに仕上がります。
そのため、塗装直後に塗料の種類を見分けることは困難です。
このことから、塗装直後の仕上がりだけで塗装の良し悪しを
判断するのは、「躯体の保護と美観」のうちの美観だけの評価
といえます。
真に良い塗料・塗装であったかは、5年、10年、15年、20年…
経ったときにわかるものです。
水性、油性、1液、2液って…?
塗料は大別すると、水性と油性(溶剤)の2種類があり、
その水性と油性には1液型と2液型があります。
水性は、言うまでもなく水で希釈できる塗料のことですし、
油性は、油(溶剤・シンナー)で希釈できる塗料のことです。
それぞれの水やシンナー(溶媒)で希釈したら、そのまま
使える塗料を1液型塗料とよんでいます。
他方、それぞれの溶媒以外に硬化剤を加えて使う塗料を2液型塗料とよんでいます。
1液型塗料よりも2液型塗料は、一般的には高価で高耐久です。
水性と油性ではどっちがいいの?
こう問われて即答するのには少し戸惑いがあります。
なぜなら、油性塗料と水性塗料の特徴を理解することが
その答えになるからです。
基本的には、油性塗料のほうが水性塗料よりも付着力で
勝っていますが、水性塗料のほうが油性塗料よりも
肉厚の塗膜が得られます。
こうした特徴から、外壁は水性塗料で仕上げ、外壁に付帯する
雨樋や破風板、軒天、霧除け(窓などにあるひさし)上部のトタン…
等々などは油性塗料で仕上げる施工例が多くみられます。
もちろん、油性塗料はある意味オールマイティーなので
すべてを油性塗料で仕上げることも多々あります。
どちらを選ぶかは、外壁の材質や下地状況、価格とのバランスなどを考慮して
職人や業者などとよく相談してから決められたら良いと思います。
ただ、一部の職人によっては、いまだに水性より油性のほうが優れていると、
古~い知識を吹聴している職人も少なくありません。
しかし、病院や保育園、幼稚園、学校、図書館…等々は、溶剤塗料不可です。
そうした施設の塗装が他の施設より早く劣化する
などということはお聞きになったことはないはずで、油性にするか
水性にするかは、適材適所が大切で、優劣を比べるものではありません。
我が家の塗り替えには、どんな塗料がいい…?
お客様の家を直接拝見させていただかないと、
具体的な塗料をお勧めすることは不可能ですが、
わたしは、新たに塗り替えるお客様には
必ず、次のようなアドバイスをさせていただいています。
それは、ご自分の家の塗り替え周期を何年に設定するか…
ということです。
木造モルタル住宅のように木部をたくさん含む住宅の場合は
そう長い周期を設定するのはお勧めできません。
なぜかというと、塗料が一番早く剥がれやすいのが木部だからです。
木は湿・乾差によって伸縮、変形するため、塗料がその変化について行けず
剥がれやすくなってしまうのです。
これは高価で高級な塗料を塗れば防げるというものではありませんので、
この木部の剥がれる時期を念頭に塗り替え周期を想定します。
木部の剥がれる時期は、木部がどこに設置されているかによって変わりますが
早いところでは3年、遅いところで10年ぐらいが限度と思われますので、
塗り替え周期を10年前後に設定した塗料の選択をおすすめしています。
具体的には、アクリルシリコン塗料など
初期のシリコン塗料がコスパを考えても最適のように思います。
サイディングなど目地にコーキング剤が使用されている住宅の場合
サイディング張り外壁の要は、何と言っても目地に充填されている
コーキング(シール)剤ではないでしょうか。
このコーキング剤の寿命は、木部と同じように外壁の面している部分によって
かなりの差があります。
まともに直射日光を受ける場所では、5~6年前後でコーキング剤が硬化し、
ひび割れが発生してしまいます。
そのため、塗り替える際には、劣化したコーキング剤を除去して、
新たなコーキング剤を打ち返すいわゆる「打ち返し」が必要になります。
もちろん、傷んでいないコーキング剤の場合は、その上にコーキング剤を
充填する「増し打ち」で済ませることもできます。
こうしたコーキング剤の劣化を考慮して、塗り替え周期を考えますが、
新築時のコーキング剤はむき出し状態なので、どうしてももちが悪く、
筑後早めの塗り替えが必要になるケースが少なくありません。
しかし、塗り替えをすると、コーキング剤の上に塗膜が乗るため
新築時よりも長持ちさせることができます。
そうしたことから、12,3年から14~5年での塗り替え周期を
お勧めしています。
具体的には、ラジカル制御型シリコン塗料や、汎用シリコン塗料などが
コスパを考慮すると、ベターな選択のように思います。
このほか、木部やコーキング剤の持ちなどを考慮しなくてすむ注文住宅
などの場合。
建物に起因する塗装の劣化を心配しないですむ家の場合は
塗料そのものの耐久年数だけを考えた塗り替え周期を設定することができるので、
20年前後の塗り替え周期を設定できると思います。
具体的には、20年前後持つフッ素塗料や光触媒塗料、またはそれ以上の耐候性を誇る
無機塗料などを選択するのが良いのではと思います。
最後に
以上わたしなりに考えた塗り替え周期の考え方ですが、
申し上げるまでもなく、この周期がすべての住宅に
当てはまるものではありません。
ただ、ややもするとできるだけ長持ちする塗料を…と考えるあまり
やみくもに高価で高級な塗料を選択するのは、もったいないような
気がするので、あえて提案したものです。
塗装にとって、何を塗るか!も大切ですが、どう塗るか…!は
それにもまして重要!
と、わたし自身は考えています。